審判が相手チームの監督だったら? 不動産取引における「利益相反」の正体
- 5月4日
- 読了時間: 5分
不動産購入という人生最大の買い物を前に、少しだけ立ち止まってみませんか?
「素敵な物件を見つけた!すぐに問い合わせなきゃ!」とその指が動く前に、知っておくべき不動産業界の「構造的なワナ」があります。
日常の買い物では当たり前にやっている「比較検討」を、なぜか数千万円の不動産では忘れてしまう。その代償は、決して小さくありません。
1. 「1品もの」という言葉に惑わされていませんか?

普段、私たちは何かを購入するとき必ず比較します。
「A店よりB店の方が安いかも?」「ECサイトならポイントがつくし……」と、1円でもお得に、納得して買おうと努力しますよね。
しかし、不動産になると、なぜか多くの人が比較検討をやめてしまいます。
実際、ほとんどの人が「最初にポータルサイトで物件を見つけ、そこに掲載していた不動産会社」経由でそのまま購入しているのが現状です。
数十円の卵の価格は気にするのに、数千万円の買い物では「最初に会った人」にすべてを委ねてしまう。その理由は、不動産が「1品もの」だからです。
「同じ物件は2つとない。今すぐこの会社に問い合わせないと、誰かに取られてしまう!」という焦りが、あなたの比較眼を曇らせてしまいます。でも、そこには「両手仲介」という名の大きな落とし穴が潜んでいるかもしれないのです。
2. 弁護士なら「禁止」されていることが、不動産業界では「日常」
理想の物件を見つけ、いざ内見。でも、営業担当者にこんな違和感を覚えたことはありませんか?
価格交渉をお願いしても「今の価格が妥当ですよ」と渋られる。
欠点を指摘しても「この程度ならどこにでもあります」と流される。
実はその背景にあるのが、業界特有の「両手仲介(両手取り)」という構造課題があるからかもしれません。
「両手仲介」の仕組みと計算式
日本の不動産取引では、一つの会社が「売主」と「買主」の両方を担当することが許されています。
仲介手数料の計算式(上限):
売主から:(物件価格 × 3% + 6万円)+ 消費税
買主から:(物件価格 × 3% + 6万円)+ 消費税
もし、4,000万円の物件を「両手仲介」で成約させれば、不動産会社は売主・買主双方から手数料をもらえるため、1回の取引で売上が2倍(約260万円以上!)になります。この時に不動産会社は誰の味方でしょうか?売主の見方?あなたの見方ですか?もしあなたの利益にならない力が働いているとしたら?あなたはお金を払って不利益な条件を買っていることになるかもしれません。
不動産仲介のパターンは以下の2つがあります
売主、買主が別々の仲介を頼む場合この場合、弁護士同士が互いにそれぞれの依頼者で争っている様な感じです。互いの依頼者の最大利益を確保する為、専門的な知見をもって戦います。
両方を1社の仲介が行う場合この場合、仲介業者は審判の役割になります。双方の立場や利益を見ながら中立な立場で双方をサポートします。この場合、審判の中立性は不動産会社の倫理感に依存することになります。
3. 2026年現在、ルールは厳しくなったけれど……
海外を含め、不動産の仲介業務は両手取りを禁止する方向に向かっています。両手取りに固執するあまり、売主にとっても売却が可能なチャンスを逃したり、物件が市場に出ないため買主が物件に出会うチャンスを奪うケースがあるからです。
「囲い込み(自社で両手取りをするために、他社への紹介を拒む行為)」を防ぐため、2025年からは改正法が施行され、不動産業者間システム「レインズ」への登録義務や罰則が強化されました。
しかし、実態としては今もなお成約の約30〜50%が両手仲介と言われています。ルールは厳しくなりましたが、業界の稼ぎ方の構造自体はすぐには変わりません。だからこそ、私たち消費者の「自衛」が必要なのです。
4. エージェントを「逆指名」する新常識 ―― 資格と口コミがあなたの資産を守る

不動産購入で後悔しないための最大の秘訣は、「どの物件を買うか」以上に「誰から買うか」を徹底的に比較することです。仲介手数料は法律で定められ、誰に頼んでも上記以上の金額にはなりません。だからこそ自分の味方になってくれる優秀なエージェントを探すべきです。
信頼できるエージェントの見極めポイント
情報の透明性: メリットだけでなく、物件の「負の側面」を包み隠さず話してくれるか。
煽り営業の有無: 「今すぐ決めないとなくなります」と、あなたの判断を急かしてこないか。
第三者の視点: 仲介手数料を目的としない「セカンドオピニオン」的な専門家の意見を取り入れているか。
弁護士の世界では、原告と被告を同じ弁護士が担当することは「利益相反」として禁じられています。不動産も同じです。「買主であるあなたの利益を第一に考えてくれる味方」を別で立て検討することは、現代の不動産取引において極めて賢い選択と言えます。
その「問い合わせボタン」を押す前に

ポータルサイトで見つけた物件に、そのまま問い合わせるのが一番手軽かもしれません。
しかし、その先にいるのは「あなたの味方」でしょうか? それとも「売主の味方」でしょうか?
「両手仲介」そのものが悪ではありません。売主に一番近い立場なのでその分売主に直接交渉出来る相談相手なのかもしれないからです。
問題なのは、比較検討の機会無しに、誰かの利益のためにあなたの利益が削られる可能性があることです。
物件のキラキラした写真に心を奪われる前に、まずは「信頼できるパートナー」を探すことから始めてください。あなたの味方となって並走してくれるエージェントとの出会いこそが、最高の結果を勝ち取るための第一歩になります。


